コラム(読み物)

李先生に聞く!シリーズ

東京穴性研究会講師の李昇昊(りすんほ)先生に素朴な質問をぶつけて、お答えいただいたシリーズのまとめです。

~中医学に出会ったころ編 ~

【1】「中医学に出会った頃の話を教えてください」

『高校を卒業して、すぐに梁哲周師匠(ケイ林東医学院)に書生として就職しました。
1978年。
それはそれは厳しい6年間の書生生活でした。
その頃、師匠のすすめで「日中学院」にも入学して、中国語の勉強もさせていただきました。
1979年には「関東針灸専門学校」へも入学して、鍼灸を勉強しました。
書生生活では、傷寒論をはじめ、素問・霊枢など古典を徹底的に読みました。
中医学にどっぷりつかりました。』


【2】「書生時代はどのような交流がありましたか?」

『その頃は、西のエベ(?)兄弟(神戸中医学研究会)、東の梁兄弟として、東西の横綱級でした。
梁先生の弟先生(梁哲宗先生)の就職先の、北里漢方研究所にもちょくちょくお邪魔させていただきました。
その頃は、大塚敬節先生・矢数道明先生など大御所もいらっしゃり、鍼灸では、岡部・木下先生などがいらっしゃったはずです。
梁先生の師匠の宮脇浩司先生(創医会会長)とも親しくさせていただきました。
この宮脇先生も豪快で天才肌で、私も具合が悪い際に診察を受けたのですが、「ベロを出せ!上に上げろ!下に下げろ!
(そこでおもむろに頭をげんこつで殴られ)」、「はい! 処方は〇〇だ!」と、訳がわからない診察を受けました。』


【3】「書生時代の鍼灸に関してのエピソードはありますか?」

『「鍼祭り」が浅草の浅草寺で開催され、師匠と毎年出かけましたが、針灸の大御所(名前は失念!)が大勢集まっていました。
その中で、神戸源蔵先生(鍼師)と師匠との会話が楽しくて、隣で聞かせていただきました。
そして、神戸先生の針を使うようになり(当時でも1本100~200円)、1年に1回針を磨いてもらうべく浅草橋の神戸先生の所へ針を持っていきます。
神戸先生がルーペで針先を覗いて一言、「大した治療はしていないね!」と。
しばらく立ち直れなかった記憶があります。』


【4】「他にもエピソードはありますか?」

『あと、当時は中医書は廉価(今の10分の1ほど)でしたが、種類も数も少なく、見つけた際には、大量に購入しました。
亜東書店をはじめに、中山書店・東方書店・燎原書店など本屋めぐりをしょっちゅうしていました。
書生当時、豊島区一里塚という場所で鍼灸院を開業していた方々が、「ベチューン(白求恩)に学ぶ会」を主宰し、梁先生のところへ学びに来ていました。
神谷節子先生・大野忠利先生など。この方々達には、非常に影響され、一緒に中医学を学びました。
あと、世田谷(?)で開業なさっていた、横山瑞生先生(バリバリの中国鍼)とも交流させていただきました。』


~鍼について編~

【1】「細い鍼を使うメリットはどういったことがありますか?」

『細い針の方が、日本人の肌膚には適しており、丁寧に穴性を発揮できると思います。
しかし細いと熟練した技術が必要になります。多少時間もかかります。
諸学の頃は、なるべく細い針(1番~2番)で鍛錬して、こまかい反応を体験して、後々は自分の使い勝手の良い番手にすると良いと思います。
太くても3番までにした方が操作しやすいでしょう。
寸6の2番~1番、もしくは寸3の0番より1番が理想かと思います。
私のイメージだと、細い針は0番~1番です。』


【2】「日本で中国鍼を使うことについてはどうお考えですか?」

『針の道具の発展してきた背景もありますが、中国人には「中国鍼」、日本人には「和針」という認識です。
もちろん中国鍼で、日本人に適した微妙な穴性を導き出して治療する先生もいらっしゃると思います。
…が、刺激の強さ・本数・深さ・置鍼の長さ・得気の強さなどを調整しなくては、刺激量が強くなりがちです。
中国鍼と言えば、15番まで見受けますが、7番以上は中国針と言うイメージです。
もう少し言えば、5番以上は太すぎて、私は使いたくありません。』


~鍼灸師に向く性格について編 ~

「中医学的な鍼灸に向く性格ってありますか?」

『この質問は、術者に対してですね?
向いている性格はあると思います。
一言「考え方が柔軟な人」です。
いつも研究会で言ってますが「概念の無いものは見えない!」のです。
我々は、身体内の見えない要素(気血津液など)を操作して治療をしています。
その体内の環境を素直に考え、体表に現れている表現と柔軟に結び付けて、それを解消するために、どのような方法が適しているか。
これらを素直に考えられる人が、中国針灸(のみならず臨床すべて)が上手に対応できる方だと思います。』


~勉強会での心構え編~

【1】「勉強会に参加するうえでの注意点はありますか?」

『おそらく今まで聞いたことのないような内容(三層構造や柔軟構造)も多々あるでしょう。
ですので、頭を白紙にして勉強会を受けてほしいです。
そして帰宅後にじっくり自分の既成概念とすり合わせて、納得いかない・理解できない内容はどんどん質問してきていただきたい(恥かきを恐れず)。
斜に構えて勉強会を受けたり、ごちゃごちゃ他のことを考えて受けたり、質問もせずにただ聞いているだけでは、時間の無駄でしょう。』


【2】「その他のアドバイスはありますか?」

『日々臨床に取り組んでいる方は、研究会で学んだことを、しばらくは試していただき、実感していただきたい。
そして、自分のものにしてほしい。
いずれにしても、どんどん疑問はぶつけていただきたい。
理解度ほど個人差が大きいものはないと思います。
分かったつもり、聞いたつもり、できたつもり、知ってるつもり…など、一人よがりは最も危険です!』


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